テンペラとは、一般的に卵で顔料を練って作った絵具およびこの絵具を用いて描いた絵画の技法をいう。卵の乳化作用を固着剤として利用し、顔料と混ぜ合わせた絵の具を作り、板に定着させながら描いている。語源は、元来「混ぜ合わせる」という意味のラテン語のTemperareに由来し、中世では動物膠や植物性の接着物を混ぜた水溶絵具の総称として用いられた。卵を用いた技法自体は、ギリシャ、ローマ以前の時代から存在したが、中世の装飾写本や、中世末からルネサンス期にかけての祭壇画(板絵)や壁画の一部として絵画技術の主要な部分を占めた。
テンペラの種類
西洋の絵画で広く行われてきた卵テンペラには油彩画のような黄変、明変を示さないという特徴があり、経年による劣化が少なく数百年前に制作された作品が今でも鮮明な色彩を保っています。 テンペラの種類は主に3つあり、エッグテンペラ・テンペラグラッサ・テンペラミスタがあります。
1.エッグテンペラ・卵黄テンペラ・・・(卵黄のみ使用+顔料)
2.テンペラグラッサ・・・(卵黄のみ使用+油+水+顔料)
3.テンペラミスタ/混合技法メディウム・・・(全卵+油+水+顔料/油絵具)
1.エッグテンペラ・・黄金背景テンペラ古典技法
中世キリスト教絵画の中に、磨き上げられた金箔を背景に絵画部分は卵黄テンペラで描かれている作品群が存在します。いわゆるイコンと呼ばれる聖人画の背景には神の神聖な空間あるいはオーラとして、多くの場合この黄金背景が使用されていました。 12世紀、ゴシック期のフェイレンツェで活躍したチマブーエの時代にはすでに技法的にも完成していたと思われています。卵黄をバインダーとした技法で、明度が高い美しい色彩、厚塗りができないなどの特質をもっており、フラ・アンジェリコ受胎告知やジョッット荘厳の聖母などが有名です。
フラ・アンジェリコ「受胎告知」
ジョッット「荘厳の聖母」
油彩画の出現以来テンペラ画は絵画技術の表舞台から姿を消しましたが、20世紀に入ると油彩との併用による混合技法を試みるパウル・クレーやカンディンスキーのような画家が現れ、アンドリュー・ワイエスの描いた純然たる卵黄テンペラ技法の作品により、テンペラは絵画技術としてさらに注目を集めるようになりました。
アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」
2.テンペラグラッサ
卵のバインダーに油性分を加えたもので、卵黄テンペラよりも絵具の伸びが自由でぼかしやグレーズも可能などの特質を持っています。 ボッティチェリの春や、ビーナスの誕生などの作品が有名です。
ボッティチェリ「春」
「ビーナスの誕生」
3.テンペラミスタ(混合技法メディウム)
「混合技法」とは、15世紀フランドルの画家で油絵具の発明者(完成者)とされているヤン・ファン・アイクの技法を後にドイツのマックス・デルナーが名付けました。「水性」のテンペラ絵具と「油性」の油絵具を併用する技法で、卵メディウムに含まれるレシチンの界面活性作用により、水と油を交互に重ねて描くことができます。全卵を使用し、卵黄テンペラよりもやや明度に欠けるが、油絵具の特徴を生かしたより幅の広い表現を可能にした特質を持っています。絵画史上最高傑作のひとつと呼ばれるヤン・ファン・アイクのゲントの祭壇画が有名です。
ヤン・ファン・アイク「ゲントの祭壇画」
匂坂祐子 作品技法について
中世末からルネサンス期の祭壇画の主要な絵画技法である黄金背景テンペラ古典技法と、15世紀末頃から北方ルネサンスで盛んに描かれた油彩・テンペラ混合技法による板絵を制作。近年では、日本の古典伝統・拭き漆蒔絵技法も取り入れ、3つの技法を用いて描いている。作品は、板を支持体として金箔・プラチナ箔を用い、黄金背景テンペラ技法は、卵黄テンペラと顔料による油絵の具ができる以前の古典的な技法を使用し、油彩混合技法では、油性の油絵具と水性のテンペラ絵具の特性を生かし、東洋と西洋の融合された独自の美・オリエンタルで優美な世界を表現している。
ラファエロの優美な調和の美しさ、油彩の創始者であるファン・アイクの透明で光沢に満ちた細密描写、クラナッハの硬質で滑らかな艶やかさ、フラ・アンジェリコの静謐な清らかさを追求し、独自の世界観による美の世界を創り上げている。テンペラの本場イタリアで開催された個展では、受け継がれた古典技法に感謝の意とボッティチェリの再来と高い評価を受けた。モナコ、イタリア、フランス、イギリス各地のフェスティバルでは、確かな古典技法と豊かな色彩表現、オリジナリティにあふれた幻想絵画に美術愛好家の絶賛を受けた。作品は、バチカン美術館、スペインプラド美術館財団、トルコイスラム美術博物館、バルセロナ海洋博物館、モナコ王室、エビアン市、エジンバラ領事館等に所蔵されている。
作品紹介
永遠の愛の伝説Ⅰ ロミオとジュリエットより~無限の愛
Légende de l’amour éternel 「Roméo et Juliette」 ~amour infini
技法説明
左から
油彩・テンペラ混合技法
拭き漆蒔絵技法
黄金背景テンペラ古典技法(金箔)
永遠の愛の伝説Ⅱ ジゼルより~無償の愛
Légende de l’amour éternel 「Gisele」 ~amour désintéressé
左から
黄金背景テンペラ古典技法(プラチナ拍)
拭き漆蒔絵技法
油彩・テンペラ混合技法
A technique of painting in which an emulsion consisting of water and pure egg yolk or a mixture of egg and oil is used as a binder or medium, characterized by its lean film-forming properties and rapid drying rate.
Tempera is paints which use a substance with an emulsification action as adherence material.
The feature that yellowing like an oil painting is not shown is among the egg tempera widely performed by Occidental pictures, and the work in which degradation by many years past was made hundreds of years of ago few is maintaining color clear even now. The kind of tempera mainly has three and egg tempera mix tempera tempera Grasser.
Egg tempera is what used the egg yolk as the binder, and has a special feature of impasto not being made, and mix tempera has special features, like mist and brightness are missing from what uses a whole egg, and egg yolktempera.
Finally, tempera Grasser is what added a part for oiliness to the binder of the egg, and has which special feature in which the growth of paints is freer than egg yolk tempera, and a shading off and glaze are also possible. Works, such as Botticelli’s spring and birth of Venus, are famous. – oil painting and tempera mixture technique (mix tempera tempera Grasser) — German Max Doerner named “a mixed technique” later Jan Juan Eyck’s technique made into the inventor (person who has accomplished) of an oil-painting implement by the painter of the 15th century Flandre.
By the technique which uses together “water” tempera paints and an “oily” oil-painting implement, water and oil can be drawn in piles by turns by surface activity action of the lecithin contained in egg .
The work group on which the pictures portion is drawn by egg yolk tempera exists against the background of the gold leaf polished up in Christianity pictures gold background tempera classic technique (egg tempera) medieval times.
In many cases, as the sacred space or the aura of God, this gold background was used for the background of the Saint drawing called what is called icon.
It is thought by the Cimabue era who played an active part in Florence of the 12th century and Gothic term that it had completed also already in technique. Although tempera drawing has disappeared from the front stage of pictures technology since the appearance of an oil painting, If it will enter in the 20th century, a painter like Paul Clay which tries a mixed technique by combined use with oil painting, or Kandinski will appear, and as for tempera, it came to attract attention further as pictures technology with the work of a pure and simple egg yolk tempera technique which Andrew Wyeth drew