1. Yuko Sagisaka PROFILE

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  4. Collection/ローマ法王/モナコ王室献上他所蔵作品

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テンペラ画とは

テンペラとは、一般的に卵で顔料を練って作った絵具、およびその絵具を用いた絵画技法を指します。語源は「混ぜ合わせる」という意味のラテン語「Temperare」に由来し、卵の乳化作用を固着剤として利用する古典的な技法です。

この技法は、中世からルネサンス期にかけて、祭壇画や壁画の主要な技法として用いられました。油絵具とは異なり、経年による劣化が少なく、数百年前に描かれた作品が今も鮮やかな色彩を保っているのが大きな特徴です。

テンペラ画の種類と歴史

テンペラ画は、使用するメディウム(絵具を溶く媒体)によって主に3つの種類に分けられます。

1. エッグテンペラ(黄金背景古典技法)

卵黄のみを使い、顔料と混ぜて描く技法です。中世のイコン(聖人画)に多く見られ、神聖な空間を表現するために、磨き上げられた金箔を背景に描かれました。 明度が高く美しい色彩が特徴で、フラ・アンジェリコの『受胎告知』などが有名です。

油彩画の登場で一度は衰退しましたが、20世紀にはアンドリュー・ワイエスによって純粋なエッグテンペラ技法が見直されました。

2. テンペラグラッサ

卵に少量の油分を加えて描く技法です。エッグテンペラよりも絵具の伸びが良く、ぼかしやグラデーション表現が可能です。ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』に代表される、優美で柔らかな表現が特徴です。

3. テンペラミスタ(油彩・テンペラ混合技法)

「混合技法」とも呼ばれ、水溶性のテンペラ絵具と油性の油絵具を併用する技法です。卵に含まれるレシチンの乳化作用を利用し、水と油を交互に重ねて描くことができます。油絵具の特性を生かした幅広い表現が可能で、ヤン・ファン・エイクの『ゲントの祭壇画』などが有名です。

フラアンジェリコ受胎告知
フラ・アンジェリコ「受胎告知」

ジョッット荘厳の聖母
 ジョッット「荘厳の聖母」

アンドリュー・ワイエスクリスティーネの世界
アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」

ボッティチェッリ春(プリマヴェーラ)
ボッティチェリ「春」 

サンドロ・ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』  

「ビーナスの誕生」

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ヤン・ファン・アイク「ゲントの祭壇画」

匂坂祐子 作品技法について

中世末からルネサンス期の祭壇画の主要な絵画技法である黄金背景テンペラ古典技法と、15世紀末頃から北方ルネサンスで盛んに描かれた油彩・テンペラ混合技法による板絵を制作。近年では、日本の古典伝統・拭き漆蒔絵技法も取り入れ、3つの技法を用いて描いている。作品は、板を支持体として金箔・プラチナ箔を用い、黄金背景テンペラ技法は、卵黄テンペラと顔料による油絵の具ができる以前の古典的な技法を使用し、油彩混合技法では、油性の油絵具と水性のテンペラ絵具の特性を生かし、東洋と西洋の融合された独自の美・オリエンタルで優美な世界を表現している。

ラファエロの優美な調和の美しさ、油彩の創始者であるファン・アイクの透明で光沢に満ちた細密描写、クラナッハの硬質で滑らかな艶やかさ、フラ・アンジェリコの静謐な清らかさを追求し、独自の世界観による美の世界を創り上げている。テンペラの本場イタリアで開催された個展では、受け継がれた古典技法に感謝の意とボッティチェリの再来と高い評価を受けた。モナコ、イタリア、フランス、イギリス各地のフェスティバルでは、確かな古典技法と豊かな色彩表現、オリジナリティにあふれた幻想絵画に美術愛好家の絶賛を受けた。作品は、バチカン美術館、スペインプラド美術館財団、トルコイスラム美術博物館、バルセロナ海洋博物館、モナコ王室、エビアン市、エジンバラ領事館等に所蔵されている。